月原神社、龍爪神社

鈴木達志

2010年02月25日 18:00






西伊豆町宇久須(うぐす)。
宇久須川沿い、山を背負った場所に建っているのが、

『月原神社(神明神社)』


創立時期も祭神由緒正しき神社です。
看板によれば...

祭神 天照大神 豊受比売命
創立 応永28年(1421)※室町時代、諸国飢饉、悪病流行、死人多し
   明治7年(1874)9月現在の神社名になる

【伝承】
 この社は、まことに後利益のある神様であるという。
この土地の物知りの老婆の語るところによると、この社の境内の南側に深い淵があり、水量も多く右回りに大きな渦を巻き、昼間でも近寄りがたく、恐ろしいような淵であった。土地の人たちは、この淵を「神明淵」と呼んでいた。
 その淵には大蛇が棲んでいるといい、泳ぐことは禁じられていた。
川の向こう側には竹がぎっしり生い茂り藪の中は薄暗く社の前には大きな木がこんもりと茂り、その大木から藤の蔓が何本となく川面近くまで垂れ下がっていた。
ある特、この老婆の祖父がまだ子どもの頃、疱瘡にかかり高熱を出して生死の境をさまよっていた。親類衆はみんなで「何とか元気になってくれ」と神に祈る気持ちで病人を見守っていた。
 おじいさんは高熱にうなされ、夢の中で狭い神明淵の周りを何回となくまわっていた。その時、白装束の老人が夢枕に立ち、淵から現れて「足元に気をつけて回れ。足を踏み外して、この淵に落ちたらお前はもう命がないぞ」と言いながら、そっと手を取ってくれた。おじいさんは淵に落ちないように一歩一歩足を運んだ。そしていつしか、おじいさんは老人に連れられて家路についたのだった。
 しばらくして、どこからともなく「しっかりしろ、しっかりしろ」という声が聞こえてきた。おじいさんは気がつき、熱も下がり、今聞いた声は周りにいる親類衆の声であることがわかった。そして白装束の老人は、神明神社の神様であることに気がついた。「ああ、おれは神様に助けられた、助けてくれたのは神明さんの神さんだ」とおじいさんは、こんな話を幼かったおばあさんに聞かせてくれたと。
 宇久須川は36年の大水によって川の土手が切れ、田畑が荒らされ家も流失する大災害があった。その後、河川改良をして神明淵は全く無くなった。しかし、神明神社は元のまま川のほとりにあって、月原の里人たちによって祀られている。

















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