尾道”文学のこみち”【3】
8.林芙美子
海が見えた。海が見える。
五年ぶりに見る尾道の海はなつかしい、
汽車が尾道の海へさしかかると、
煤けた小さい町の屋根が提火のように、拡がって来る。
赤い千光寺の塔が見える。
山は爽やかな若葉だ、緑色の海向こうにドックの赤い船が、
帆柱を空に突きさしている。
私は涙があふれていた。
9.緒方洪庵(おがたこうあん)
軒しげくたてる家居よ あしびきの
山のおのみち道せまきまで
10.巖谷小波(いわやさざなみ)
大屋根は みな寺にして 風薫る
11.山口玄洞(やまぐちげんどう)
明徳を明らかにす
12.山口誓子
寒暁に鳴る指弾せしかの鐘か
13.柳原百連(やなぎはらびゃくれん)
ちゝ母の 声かときこゆ 瀬戸海に
み寺の鐘のなりひびくとき
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