尾道”文学のこみち”【3】

鈴木達志

2010年06月08日 06:00






8.林芙美子

  海が見えた。海が見える。
  五年ぶりに見る尾道の海はなつかしい、
  汽車が尾道の海へさしかかると、
  煤けた小さい町の屋根が提火のように、拡がって来る。
  赤い千光寺の塔が見える。
  山は爽やかな若葉だ、緑色の海向こうにドックの赤い船が、
  帆柱を空に突きさしている。
  私は涙があふれていた。












9.緒方洪庵(おがたこうあん)

  軒しげくたてる家居よ あしびきの
  山のおのみち道せまきまで












10.巖谷小波(いわやさざなみ)

  大屋根は みな寺にして 風薫る













11.山口玄洞(やまぐちげんどう)

  明徳を明らかにす













12.山口誓子

  寒暁に鳴る指弾せしかの鐘か












13.柳原百連(やなぎはらびゃくれん)

  ちゝ母の 声かときこゆ 瀬戸海に
  み寺の鐘のなりひびくとき



















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